CMOSカメラの特徴

■概要
近年ではCMOSセンサを搭載したカメラが多く普及し、CCDカメラは冷却CCDカメラなどかなり 限られた分野でのみ見られるようになってきている。 CMOSセンサが普及する大きな理由は カメラの回路がCCDのそれに比べシンプルであるため、多くのメーカーが参入しやすいところにある。  市販されている多くのCMOSセンサは画素サイズと面積が小さく、またモノクロセンサの選択肢が 少ないことから、絶対的光量を必要とする天体撮影では適したCMOSセンサが多くないが それでもCMOSセンサの特徴を活かせる分野では使われるケースが増えてきている。 顕著なのが 惑星撮影でこれには明確な理由があるので、画像処理の理論と併せて説明していこう。

■画像処理理論
カメラで取得される映像は真の姿に光学系や大気のシンチレーションによる解像度の劣化と 電子的ノイズが加わったものとなっている。 このため高倍率で撮影する惑星はこの現象が顕著に 現れており、画像処理を駆使して光学系や大気のシンチレーションによるボケを改善している。  これを数学的に説明すると次のようになっている。
真の姿 True
光学的劣化 PSF
電子的ノイズ N
出力映像 Img

Img = ∫∫True×PSF + N 

この式からTrueだけを厳密に求めることは難しいが、いくつか条件を付けると 理論的にはTrueだけを求めることができる。

まず、ノイズが無い綺麗な映像であるとすると上の式は次のようになる。

Img = ∫∫True×PSF 

この映像空間をフーリエ変換して周波数空間に置き換えると、

Img = True×PSF 

と単純な掛け算になり、

True = Img/PSF

周波数で表現された映像を同じく周波数でPSFで割り算することで真の姿を求めることが可能となる。

■画像処理の実際
実際の映像では諧調がありピクセルサイズで区画されているので数式通りに画像処理をすることはできないが、 映像をコンポジットし分解能あたりのピクセル数を広くとればこの数式に近づいていく。 また、 ノイズもゼロにすることはできないが、最近のCMOSカメラの読み出しノイズは CCDに比べ1/10程度まで小さいものもあるため、従来よりもノイズが小さく理論値に近い処理ができ良い結果が出ている。 上の式ではSN比が無限の場合の理論的なケースであったが、映像では信号強度に応じてショットノイズが乗っており SN比が有限であるためPSFで割っただけでは真の姿がを求めることはできないが、映像を 大量にコンポジットすることで映像のSN比も向上し画像処理により真の姿に近づけることが できる。 つまり、ショットノイズと電子的ノイズを抑えSN比を上げていくほど画像処理により真の姿に近づくことが可能である。