シグナルが検出できるかどうかのファクタとしてシグナルノイズ比(以下SN比)があります。 シグナルの 四則演算とノイズの計算について説明いたします。 また、頻繁に直面する具体例をいくつか列挙します。 ■光信号の四則演算 CCDに写った光信号の四則演算は算数の四則演算とまったく同じになります。 〔式〕 強度 I1 と I2 の和 I は I = I1 + I2 となります。 差も同様に I = I1 - I2 となります。 ■ノイズの計算 CCDに写ったノイズはその近傍の信号のばらつき(標準偏差)で表されます。 ノイズ σ1 と σ2 の和 σ は 〔式〕 σ2 = σ12 + σ22 差は四則演算と異なりノイズの和と同様になります。 σ2 = σ12 + σ22 (差は和に-1をかけたもので二乗しているため符号がかわらない) ■具体例 〔例1〕コンポジットした場合のSN比の向上 〔例2〕ダーク減算した場合のノイズの振る舞い 〔例3〕背景光がある場合のSN比 〔例1〕コンポジットした場合のSN比の向上 信号強度 I ノイズ σ の映像を N 枚コンポジット(加算)した場合SN比は SN = I / σ となります。 コンポジット後の信号強度 I’とノイズσ’は次のようになり I’ = N×I σ’2 = N×σ2 (加算の場合) σ”2 = σ2/N (加算平均の場合:例2で使う) となり、SN比は SN’ = I' / σ' = N × I / √(Nσ) = √N × SN となり、Nの枚数の平方根に比例してSN比が向上していくことがわかります。 〔例2〕ダーク減算した場合のノイズの振る舞い 撮影した映像からダーク減算するプロセスを考えます。 撮影した映像に信号強度 I の映像が写っており、ダークカレント d とします。 同じCCD温度のダークフレームも用意しダークカレントの量は同じく d となります。 ダークカレントのばらつきをσdとするとダーク減算するまえのSN比は SN = I / σd となります。 しかし実際にはダーク減算をするとダークシグナルは消えますがダークカレントのばらつきは増え σ2 = σd2 + σd2 σ = √2 × σd = 1.414×σd ダーク減算したにも関わらずSN比が悪化します。 SN = I / σ = I / 1.414×σd ダーク減算をするとぽつぽつと見えるホットピクセルは消えて一見ノイズが除去されたように 見えますが、背景のざらざらした状態のノイズは消すことができず逆に悪化します。 この解決策としてダークフレームをより多く撮影しておき、より真の値に近いダークカレントを 用意しておくこと減算してもばらつきの増強を抑えることが出来ます。 ダークカレントのみに注目します。 撮影した映像から1枚だけのダーク減算を行うとダークカレントの標準偏差は次のようになります。 σ’2 = σd2 + σd2 = 2×σd2 ところが撮影した映像からN枚平均したダーク減算を行うと σ’2 = σd2 + σd2/N となり、N=100とすると、 σ’2 = σd2 + σd2/100 = 1.01×σd2 となりノイズが悪化するのを防ぐことができます。 通常Nは4-8枚程度で十分効果が見えます。 〔例3〕背景光がある場合のSN比 被写体強度 i の背景に一様に広がった光強度 I がある場合の被写体に対するSN比は まず簡単のために背景光のフォトンノイズ(ショットノイズ)を考えます。 I のショットノイズはゲイン1とすると σI = √I となり、ダークノイズなどを加えたトータルのノイズ σ は σ2 = σd2 + σI2 となり背景によるフォトンノイズの影響で無い場合よりもSN比が悪くなります。 背景光が無い場合 SN = i / σd 背景光がある場合 SN = i / √( σd2 + σI2 ) したがって、非常に微弱な信号を捕らえるときには背景レベルを抑えることが大変重要になってきます。 光学ナローバンドフィルタなどを使って背景光を抑えることは非常に効果的です。 TOPに戻る TIPSに戻る |